どこかで誰かが
苦しんで泣いている。
その事実を知っていても
自分では何もできないとき
私は猫になる。
守るべき家族がいて
こなすべき仕事があるから
毛づくろいと昼寝とゴハンだけで
一日を終えるわけにはいかない。
だから時計を見ることができる猫になる。
過ぎ去ったことも
これからのことも考えない。
黙々と目の前にあることをやる。
散らかっているものを整え
食事の支度をして
後片付けをする。
仕事を順番に片づけ
必要なものを買いに行く。
苦しんでいる誰かの代わりに
私が泣いたって
その人の悲しみが減るわけではない。
そして
眠りにつく前に祈る。
その人の苦しみが
少しでも早く和らぎますように。
そして
猫のように眠る。
foto Yaegashi Luna