誇張表現でも
奇妙な願望でもなく
そのまんま事実。
海外出張のお土産に
父がシャネルの香水を買ってきた。
鼻が利かない母は「使わないから」と
トイレの臭い消しに使っていた。
幼い頃はシャネルの香水が
価値のあるものだと
まったく知らなかったので
トイレの窓にちょこんと置いてある
2つの小瓶を何も考えずに見ていた。
ある程度成長してその値段を知って
トイレの臭い消しには
ふさわしくないと解ったとき
2つの事を思った。
値段を知っていた母が
躊躇せずにトイレで使う度胸。
お土産を渡した後は
相手がどう使おうが
感知しない父の肝っ玉。
この2つに微かな感動を覚えた。
豚に真珠、母に香水。
他人には価値があるものでも
自分に必要なければ無用の長物。
その精神をワタシは
しっかりと受け継いでいる。
foto 長尾景虎 [写真素材 足成]