アレコレ楽書きessay

「イタリア楽描きessay」のサブブログ

高層ビルから落ちるトウモロコシ

こんな夢をみたことがある。


高い建築物の窓際から

飛ぼうとしている。


自殺ではない。

1歩前に踏み出せば

ちゃんと飛べることを知っている。


工事現場のように

足場の組まれた

その建物に窓ガラスはない。


縁から下を覗く。

私はひと粒の乾燥した

トウモロコシを投げた。


地球の重力の法則に沿って

その粒は

カン、カンカンと

乾いた音をたてて

下へと落ちていった。


もしも飛べなかったら

私はあの小さな粒のように

どんどん落ちる。

そんなことを考えていた。


私達はいつも

背中にしっかりとした羽根が

生えてくるまで

飛びたとうとしなかった。


だから長いこと

飛ぶことができなかった。


もっとお金があれば

もっとかわいかったら

もっと才能があれば


そんな風に

自分以外の誰かの

美しく力強い羽根を

羨んで渇望して

じっとしていた。


欠けている

足りない

できるわけがない


そんなオモリを

自分で作っては

足元にくくりつけていた。


私の抱いていた

恐怖心はトウモロコシの粒。

もう手元にはない。


そして1歩を踏み出したら

鳥のようにぐんぐんとは

羽ばたけなかったけれど

飛石を踏んで進むように

足場が現れる。


空の旅は快適。


木の枝に座って

休んでいる女性に会った。

彼女は言った。


「腐った枝に気をつけてね」


側にあった大木が

バキバキと崩れ落ちた。


私達が安全だと

信じて疑わなかった

大木の中身はスカスカで脆い。


私は自分の直感アンテナで

飛び続ける覚悟を決めた。



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Foto Yaegashi Luna