アレコレ楽書きessay

「イタリア楽描きessay」のサブブログ

人間関係だけが基本の世界

養老孟司さんが人の幸福感について
語っているYouTubeを聞いた。

あなたは幸せですか?

というアンケートに
不幸だと答えた人は
その場には誰もいなかった。

その幸福感の理由が問題だと
彼は言っている。

家族がいるから。
仲のいい友達がいるから。
働きやすい職場だから。

現代人が感じている幸せの鍵は
ほぼ全て人間関係にある。
花鳥風月すなわち自然が
まったく関与していない。

だから人間関係がうまくいけば
幸福感を感じるけれど
うまくいかなかったら
辛すぎて逃げ場がない。

そのわかりやすい例がいじめ。
コンクリートとヒトに囲まれた
自然からほど遠い場所で
人間関係に行き詰まると
閉塞感しか感じない。

彼は言う。
理不尽な人や有無を言わせない暴力は
昔から存在したけれども
ざっくり表現すると
昔は人間界と自然界が半々だった。

だから逃げ場があった。
別の世界がいつもそばに存在していた。
お節介もやかないし
むやみに介入してこない
自然界が人間界の近くにあった。

そこには成功も評価もない。
期待も失望もない。
言葉遣いや態度に
誰もなにも言わない。

現代人がアンバランスなのは
人間関係だけが幸福度の基準に
なっている割合が大き過ぎるから。
彼の観察とことばにうなずく。

私は昨年の秋離婚した。
息子達の住む家を出て
ひとりで暮らしている。
ほどよい自然と心地よい人間関係に
恵まれている環境に身を置き
穏やかな幸福感に包まれている。

物理的にいつも側に人間が
いてもいなくても
私自身の幸福感は変わらない。

周囲の人間と関わることを
拒まないし熱望もしない。
ひとりの食事も味わうし
誰かと何かを共有する時間も楽しむ。

バランスがとれている。
その自覚がある。
価値観や信念の違う人間と
共にひとつの家族経営をするために
自分の健康を省みなかった頃は
頻繁に体調を崩していた。

不幸ではなかった。
楽しい時間をたくさん紡いだ。
大きく育った植物の植木鉢を
変えるようなタイミングが
やってきただけのこと。

同じ植木鉢に収まるために
根や枝葉を切り落として
同じ場所にいたって構わない。

のびのびと成長できる場所へ
移動することを私は決めた。

変化が見える形で訪れて
現実世界に歪が現れたとき
この土地の自然はいつも
静かに寄り添ってくれた。

ああしろ、こうしろ、こうすべき。
そんなことはひとことも言わなかった。

芽が出て成長し花が咲き
やがて枯れて種を作る。
あたりまえの自然のサイクルを
体現して惜しげなく見せてくれた。

だから暴言を浴びても
通過儀礼のようなものだと
すっと流すことができた。

バランスのとれた場所で
穏やかに暮らすことができる。
そのことに心から感謝している。

今週末は久ぶりに雨。
車を車庫から出して
天然の洗車サービスを活用中。

素敵な日曜日をお過ごしください。

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Foto Yaegashi Luna