アレコレ楽書きessay

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淡い桃色のたくさんの蛇

1本の線が絵の表情を
がらりと変えてしまうように
たった1本の糸が服の姿を
変化させてしまう。

今職場で作っているのは
かわいい赤ちゃん用の服。

私の担当場所は
背中のチャックの端処理。
手作業で角を折り込んで
丁寧に形を整える。

なるべく縫い跡は
見えない方がいい。
小さな蛇のような動きで
ゆるすぎず強すぎない力で
ぴたりと縫いつける。

チャックの部分は当然硬い。
縫い付ける布は柔かい綿。
力のバランスを少し間違えると
布が傷んでしまったり
服の形が歪んでしまう。

淡い桃色の糸をくねくねと
這わせることで角が収まる。
私は蛇使いになって
たくさんの桃色の蛇達を
巧みに操り踊らせる。
そしてぴたりと納める。

針・糸・布とのやりとりは
他人には聞こえない会話。
どれくらいの力を入れればいいのか。
角度はこれくらいか。
深さやタイミングはどうか。

なんだかセクシーな表現だ。
淡い桃色の蛇っぽい。

針仕事へ行ってきます。
素敵な1日をお過ごしください。

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Foto Yaegashi Luna