小学校の近くに
急な下り坂があった。
傾斜角度がキツイので
自然と歩幅が狭くなる。
いつもその場所に差し掛かると
「何も考えない」ことを
自分に課していた。
最初は「何も考えない」と
脳内でコトバが響く。
やがてその言葉も消える。
学校が嫌だった訳でもなく
家の居心地が悪かった訳でもなく
ただ頭を空っぽにする坂道だった。
その頃は瞑想なんて言葉を
知らなかったけれど
定義も方法も伝授されなくても
ひとりでやっていた。
母親のお腹に降りてくるとき
同じことを皆やるのかもしれない。
最近生まれたばかりの
かわいい女の子の顔を眺めて
ふと、そう思った。
foto Yaegashi Luna