近頃30年越しでやっと
元の形に戻った物がある。
ブレーメンの音楽隊を型どった
黒い鉄製のフック。
出会いはモスバーガーだった。
アパートの近くにある店の
トイレのドアに
上着や荷物をかけるために
設置してあったフック。
かわいいなぁ、と
トイレに行く度に思っていた。
数ヶ月後のある日
てっぺんの雄鶏部分が折れていた。
誰かが重い物をフックではなくて
雄鶏にひっかけたのだろう。
あ、やべぇ。
落ちた雄鶏パーツを
フックとドアのスキマに挟んで
その誰かは立ち去った。
私がその後トイレを使用して
なんとなくそわそわした気分で
その日はモスバーガーを立ち去った。
捨てられちゃうのかな。
再びその店を訪れたとき
店員さんに言ってみた。
「トイレの荷物フックの一部分が
折れちゃってますけど
もし、処分するなら譲ってください。
交換して設置するフックが必要なら
代替え品を持って来ます」
デザインも材質も
思いっきり好みなんです、と伝えて。
幸いにも責任者の方がいて
あっさりと譲ってくれた。
交換するフックもいりません、と。
先日まで薄い強力磁石で
少しずらしてくっつけていた雄鶏。
やっと接合してもらった。
ほぼ30年の歳月を経て。
例えばとても大切な人との
再会の話だったら?
また会えるまで30年かかりますよ、と
先に言われたらどう感じる?
創作物の完成形を目にするまでの
年数だったらどう思う?
この作業は30年かかりますよ、と
始める前に告げられたら
着手する気になる?
時間の感覚や年月の体感を
刷り込まれていない子供ならば
楽しそう
やりたい
おもしろそう
だけであっさりと
「うん。いいよ。やる。」
って言うかもしれない。
それを大人ができたら最強。
30年っていったら
平均人生期間の1/3を越える。
モスバーガーで出合ったフックは
はるばる日本からイタリアへ渡り
田舎街のアーティストの工房で
30年ぶりにくっついた。
待たなかったから
30年の歳月は気にならなかった。
他に楽しいことも
やりたいことも
やるべきことも
たくさんあった。
重くない30年だった。
大切な人と再会したのも
出会って離れてから30年後。
先に告げられていたら
30年間の日々は
どうなっていたのだろう。
知らなくてよかった。
楽しい!おもしろい!
は最高&最強エネルギー。
楽しかったらずっとやっていられる。
おもしろかったら飽きない。
辞めない覚悟っていうと
少し重い感じがする。
ついやってしまうこと。
やらずにはいられないこと。
それらを紡いで日々を楽しむ
これからでありますように。
これからの30年も
嗚呼!おもしろかった!と
明言できる日々でありますように。
久しぶりにがっつりと
インフルエンザと仲良く
過ごしていました。
今日から職場復帰します。
日本在住のみなさんは
ゴールデンウィーク真っ最中ですね。
ゆっくりたっぷり楽しんでください。
針仕事へ行ってきます。
素敵な1日をお過ごしください。
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