華やかなピンクの
シルクのロングドレス。
繊細ドレープの胸元。
あらわな背中に走るクロス紐。
そんなパーティードレスを
いま進行形で作っている。
担当しているのは
直径2mmの紐の端処理。
スカウトされて3年経過。
ミシン作業はやったことがない。
手作業のみの専門職。
こんな世界があると
全く知らなかった。
細かい作業が得意なので
手作業仕事の中でも
とくに数ミリから1mm以下の
極小世界を担当している。
ピンセットで形を整え
なるべくきれいに
針と糸を通して仕上げる。
今回の作業は2×5mmの範囲。
初めて扱うタイプの丸紐。
1本目からイメージどおりに
きれいに処理ができた。
金メダル級のガッツポーズを
心の中で堪能した。
声も出さず表情も変えずに。
マニアックな私の密やかな
オリンピック体験。
華やかなファッションに
興味がなかったのに
世界中に名の知れた
ハイブランドの服を作る。
おもしろい世の中だ。
人生はびっくり箱。
販売価格に納得がいく。
細部まで丁寧に
作り込んでいくし
チェックが厳しい。
ミリ単位以下の修整は
当然の通常作業。
そして試行錯誤の細かさと
やり直しの回数がすごい。
イメージが形になるまで
何度も何度もやる。
失敗なんてありえない。
単なる通過点だと体感する。
関わる人間の数と
手間や経費を換算したら
あたりまえの正当な価格。
相変わらず
GUCCIやVERSACEの
服が欲しいと思わない。
けれども欲しがる人達が
いるからこそ
マニアックな私の密やかな
楽しみが生れる。
世の中はうまくできている。
本日も金メダル仕事へ
行ってまいります。
みなさん素敵な1日を。
Foto Yaegashi Luna
